窓の外

障害者福祉のこと、趣味のこと、やってみたいこと、などなどつぶやいてます。

白昼夢

 薄曇りの午後。木陰に立っていると肌寒さを感じるのは、僕が寒がりだからか・・・。その気温のおかげもあって、外を歩いていても汗をかくことはない。風は心地よく、秋の香りを運んでくる。田舎に帰ったら必ず散歩する。その時カメラを持っていることが多いのは、昔を思い出させる風景とその変化を記憶しておきたい、という思いからである。
 カメラを片手に歩くその道は過去を思い起こさせる。いい思い出も、悪い思い出も・・・。田舎は変化が少ない。昔からある古い家は、当時より朽ちているとはいえそこにあるし、新しい建物が建つことも少ない。幸か不幸か、変わらないその風景が、それを見る人に昔の思い出をより鮮明に思い出させる。ひそかに思いを寄せていた年上の女子と一緒に帰った帰り道、いじめていた同級生の思い出、いたずらをして怒られた思い出・・・。
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 以前は一眼レフを肩からぶら下げて歩いていたが、最近はコンパクトカメラを持ってあることのほうが多い。昼間のスナップであれば、コンパクトであっても画質に全く不満はないし、何より動きやすいのでいろいろな場所に気軽に行くことが出来るからである。身軽、というのは散歩&スナップにおいては強みになる、と僕は思っている。
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 その角を曲がったとき、前を子供が二人走っていくのが見えた。女の子が前を走り男の子がその後ろを追いかけていく。二人とも楽しそうに笑っていた。その二人は細い山道に入っていく・・・。
「確かあの先には・・・。」
 そのつぶやきを聞いていたのか、近くを飛んでいたトンボがスーッとその細道へ向かって飛んで行く。そのトンボに導かれ、僕もその細道を登って行った。
 登りだしてしばらくすると、小さな社が見えてきた。ここは昔、僕と幼馴染の秘密の場所だった。その当時、小学生の足ではここまで登るの長くしんどい道のりだと感じていたが、大人になってきてみると大したことはなく、長いと感じていた距離も数百メートルと大したことがないことにいまさらながら気づくのである。というのも、ある事件をきっかけに、僕は意図的にこの場所を避けていた。なのでここに来るのは約30年ぶりである・・・。
 事件、と書いたそれは、僕が10歳の時に起こった。日曜日、僕はいつものように幼馴染の家に遊びに行った。季節は秋、心地よい風が吹く中二人は鬼ごっこして細道を駆け上がり社で休憩した。その時、僕は彼女から衝撃的な一言を聞くことになったのだ。
「ねぇ、キスしてみない・・・。」
 その言葉を聞いたとき、僕は声が出なくなった。キスはもちろん知っていたし、ドラマなどで見たこともあった。でもそれは大人がするものであって、子供の自分とは無関係なものだと、当時の僕は思っていた。そんな僕にとって、幼馴染の一言は衝撃的なもので、急にその幼馴染が別の人物に感じられるようになったのだ・・・。返事が出来ないまま、しばらく静かな時間が流れた、と僕は記憶している。しかし、その時間が数秒なのか数分なのかまでは覚えていない。ただ、とても気まずい時間であったことは思い出せる。それは発言をした幼馴染にしても同じだったのかもしれない。いや、もしかすると勇気を出して言った一言に対する僕の返事がなかったことに対して、憤りを感じていたのかもしれない・・・。
 その後のことはあまり思い出せない・・・。その雰囲気のまま二人は何となく分かれて家に帰った。もちろんその日にあった出来事はだれにも打ち明けることがなく、心の奥にしまわれてしまったのである・・・。
 次の日、幼馴染は学校に来なかった。心配にはなったが、昨日のこともあり家に様子伺いに行くことは出来なかった。3日ほどして幼馴染は登校してきたが、その時も何となくぎくしゃくした感じだったのを覚えている。そしてその日のうちに、僕は担任から幼馴染が転校することを聞いた。
 転校先は遠くの町で、幼馴染の母親の故郷であると知ったのは、幼馴染が引っ越してしばらくしてからである。当時は転校の理由は、家庭の都合、とだけ聞いていたが今はその理由を推察することが出来る・・・。
 転校後、幼馴染に会うことはなかったし、連絡も取っていない。元気にしているだろうか・・・。
 昔を思い出し社の前に寝ころんで、思い出に浸りながら僕は空を仰いだ。
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 すすきの穂が揺れ、その音が聞こえるような静かなその場所で、僕は細道を駆け上がっていった二人を思い出した。あの二人は過去の僕たちだったのか・・・。心の奥に閉じ込めた思い出が僕に見せた白昼夢か・・・。
 僕はゆっくり目を閉じて、当時感じることのかなった幼馴染の唇の感触を想像したのである・・・。




コンパクトで40倍ズームでコスパもいい!2017年発売のカメラですが特に大きな不満なく使えると思います。




最新のRicohGRに比べると不満な点はありますが、お散歩やスナップではまだまだ使えると思います。今回載せてる写真はすべてこのセットで撮影したものです。撮って出しの色もかなり細かく設定することが出来ます。今回はブリーチバイパス風の設定で撮影しました。載せてる3枚の写真はどれも撮って出し無加工です。


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淹れたコーヒは冷めてしまった・・・

 就業時間終了まであと5分。意外とこの5分が長く感じるものである・・・。
 彼は椅子から立ち上がってコーヒーを淹れた。
 仕事終わりに飲むコーヒーくらいインスタントでなければいいのだけれど・・・。と心の中でつぶやくが、まだ勤務が終わっていないのにのんびりしているので贅沢は言えないか・・・。そうはいっても、電気ポットからカップにお湯を注ぐとコーヒーの香りが漂うので少し心地よくなる。
 再び椅子についてコーヒーを一口飲んだところで、内線の呼び出し音が鳴った。他の職員が電話を受けて、その後その電話が彼にまわされた。
 電話の内容を聞いたあと、彼はコーヒーを一口飲んで席を立った。
「日中一時支援の事務所に行ってきます。」
 そう言ってドアを開けたときに、時計の針が就業時間の終わりの時間を指した。
「お疲れさまでした。」
 ドアを閉めるときにそういって、彼は目的へ急いだ。
 電話の内容はこうであった。日中一時を利用している利用者の内服薬を事務所で保管していて、その日の夜と寝る前に飲む薬を送迎のときに利用者宅に持参しているのだが、明日からの薬がなくてどうしたらいいか・・・。
 この話を聞いたときに彼の頭にはたくさんのネガティブな言葉が嵐のごとく吹き荒れたのであった。文字に起こすには憚られるので内容はご想像にお任せする・・・。
 事務所についた彼は、いつも通りの口調で説明を求めた。が、返答は今日家族に渡す薬を取り出したら最後の一包であった。というのみで、なぜ次の受診予定より早く内服薬がなくなったのか、の説明はなかった。
 補足ではあるが、この利用者の受診は彼が引率している。家庭の事情で、家族が受診に連れていくことが出来ないという理由と、彼が勤務している入所施設の利用者数名が同じ病院、同じ主治医を受信している、という2つの理由からである。
 次の受診予定は今日を入れれば4日後、明日の朝からの内服薬がないので3日分足らないこととなる。送迎のときに夕と眠を一包ずつ家族に渡しているので、普通は薬を多く渡すことは考えられない。となると・・・、日中一時の利用がない週末の内服薬を渡したときに多く渡してしまった、という想像ができる。といっても、これは想像であって事実ではない。実際に、家族に内服薬のあまりが無いかを確認したのだが、うちには余っている薬はない、と言われたのだ・・・。この言葉がどこまで信じるに足るのか、家庭で薬の管理が出来ないから日中一時で管理しているのである・・・。
「原因究明は後にして・・・。」
 小さくつぶやいた彼の言葉が近くにいた職員に聞こえたのか、その職員がちらりと彼の顔を見た。彼は横目でそれを確認していたが、あえてそちらに目線を移さなかった。
「とりあえず、受診先に連絡を入れてみます。」
 受信先の病院に連絡を入れ当直の看護師に希望を伝える。当直Drが処方を書いてくれるとのことで事なきを得たのだが・・・。
 以前から彼は内服薬の管理を日中一時支援で行っていることなどに疑問を感じていた。しかも内服管理を行っているのにそれはボランティアサービスなのである・・・。
「無償で行っているからミスが起こる、とは言わないですが、ミスが起こったときに無償でやっていたのだから仕方ないですよね、ではすまないんですよ。今回の事例がもし過量服薬につながって副作用なりの健康被害が出たときに、家族が事業所や法人を訴えたとしたら・・・。内服薬を管理するってことはかなり大きな責任があるんです。それを無償でやっていることが信じられない。内服管理を行うならサービスとして支援費をとれる方法を考える必要があると思う。」
 彼はここまで一気に話して大きく息を吸った。
 これまでどんぶり勘定で、何となく行われたボランティア的サービス、それで何となくうまくいっていたところに、彼はメスを入れようとしている・・・。それを快く思っていない人物は少なくないだろう・・・。いろいろ変えていくのは面倒なことだから・・・。彼にしても、発言はできるが実際に変える力はないので歯がゆさを感じることが多々あるだろう・・・。
 彼も棘のある言い方ではなく、印象の良い言い方にすればいいのに・・・。管理側も一気にすべてを変えることが出来なくても、可能な範囲で少しずつ変えていけばいいのに・・・。
 彼の直接の上司ではないが、中間管理職の私などはそう考えるのである。




因みに、これ彼が使用しています。彼によると、Amazon musicを利用できるのでこれにしました。とのことです。unlimitedを利用されてる方は検討の余地があるかもしれないですね。

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分からないってことが・・・

「幽霊っていると思う。」
 出勤してすぐに彼女が聞いてきた。
「唐突な質問ですね。」
 何かあったのかなぁ・・・。僕は夜勤明けの彼女の顔を見た。
「もしかして、夜勤で出たんですか。」
 直球過ぎる言葉を口にするのが僕の長所でもあり短所でもあると思っているが・・・、どちらかといえば短所として働くほうが多いだろう・・・。
「もし夜勤で出たら、業務どころじゃないわよ。」
 そう言って笑う彼女を見ていると、たとえ幽霊を見ても叫び声をあげて逃げる姿が想像できない。実際、彼女は体格もいいし、柔道をしていたのでそこらの男どもよりも強いだろう。もちろん、体力的に優れているからといって超常現象的なことにも強い、ということはないのだろうが・・・。
「どっちの答えを期待してその質問をしたんですか。」
 職場での彼はいつもこんな調子なのだが、プライベートはどんなんだろう・・・。家庭でもこんな感じなのだろうか・・・。過去にこのことを彼に聞いたのだが、彼の答えは・・・、それを知ってどうするの、であった・・・。
「期待通りのそっけなさ、病院で働いてた時にそういうの見たりして信じてないかぁ、って思ってね、それで聞いてみたのよ。」
「人の期待に応えることが出来たし、夜勤はもうすぐ終わるし、今は最高の気分だなぁ。」
 いつもと変わらい表情で答える彼、本当に最高の気分なのだろうか・・・。最高の気分なら僕が直球の質問をしても答えてくれるのだろうか・・・。
「最高の気分て割には、顔を見たらそんな風には見えないけど。」
「表情の微妙な変化に気づけるようになってね。」
 彼は右の口角を少し上げた。
「気分がいいなら私の質問に答えてよ。」
「幽霊はいると思うよ、ただし、うらめしやぁ、的なのは違うと思ってる。人の肉体ってラジオの受信機のようなものだと思っていて、宇宙の意思の集合体からの電波みたいなのを受信してるんだよ。肉体がなくなっても同じ周波数の電波みたいなものは出続けていて、その周波数と近い周波数の肉体で感受性が強いと混線してしまって、それが幽霊として見える、って感じなんだと思ってるよ。」
 僕は彼がそんなことを言うことのほうがびっくりした。そして、以前彼がタブレットで超常現象などを扱った雑誌を読んでいたのを思い出した。
「やっぱり気分がいいんだね、そんな話をするところ初めて見たよ。」
 笑顔で話した僕に対して彼は。
「初めてってことはないと思うよ、勉強会ではちゃんと説明したりしてるし、興味がある話題なら雑談でもちゃんと答えるさ。」
 と表情を変えず答えた。さっきの気分がいいといったときとの表情の差はない・・・。
「それともう一つ、病院で働いてたら幽霊どころじゃない、もっと怖いことをたくさん経験するから。」
 さっきの話で終わりだと思っていたが、自分から話題を広げる彼に、僕はさらにびっくりした。やはり気分がいいのだろう・・・。
「もっと怖いことって、医療ミスとか・・・。」
 彼女が突っ込む。
「それもあるけど、巡室してたらトイレでぶら下がってたとか・・・。保護室に入室中の患者の急変とか・・・。アルコール依存症の患者と女性看護師が夜勤でヤッてたとか・・・。」
 表情を変えることなく彼は話すが、どれもすごい話である。といっても、それらがすべて本当かどうかはわからないのだが・・・。
「まぁ、怖いのは幽霊だけじゃないってことだよ。」
 そう言って右の口角を上げる彼。これは彼が伝えたいことを伝えた後によくやる癖である。
保護室の患者の急変は、ほんとにマズそうだね・・・。」
 苦笑いをするかの時に僕は。
「トイレでぶら下がってるのも、まずいと思うよ・・・。」
 と答えた。実際、心臓発作などの急変ならまだ対応できそうだが、縊首となると冷静ではいられないだろう・・・。そうはいっても、僕はそのどれも見たことがない。
「実際には、依存症患者の件が一番問題になった。何しろその患者も看護師も既婚者だったからねぇ・・・。」
 そりゃ、大きな問題になりそうだ・・・。と僕が思ったときには彼は次の話を始めていた。
「なんで幽霊は怖いと思う。」
「そりゃ、得体が知れないし、気味悪いし・・・。」
 彼女の意見に僕も同意した。自分と違う存在に対して、人は恐れを抱くのかもしれない・・・。
「わからないものって怖いんだよ、当然のことだけどね。さて、世の中の人がここで生活してる利用者のことをどのくらい知ってると思う。ここの施設についてどのくらい知ってると思う。言葉だけは知っていても、自閉症がどんなものなのか、発達障害がどんなものなのか、詳しく知っている人は多くないと思う。それは入所施設についても、もっと言えばグループホームについても、障害者支援施設全体についても、そうなんだと思う。分からないから関わりたくないし、関わってほしくない。それが施設は地域の中にあるのに、施設は地域から隔絶されていて、そこで生活している利用者も地域で生活できていないことが多い、ってことにつながってるんだと思うよ。」
 そう言って彼は席を立った。
「なるほどねぇ、地域にいろいろ知ってもらうことが必要ってことよねぇ。でもそれって結構大変だよねぇ。」
 さっきと違い真剣な表情の彼女。
「地域への働きかけをどうすればいいか、ってのは今すぐに答えれるほど簡単じゃない。それに地域に知ってもらうのにもすごく時間がかかる。個人レベルというより法人レベルでの働きかけが必要になるだろうなぁ・・・。」
 そういうと彼は荷物を手に取った。
「ちょうど夜勤終了の時間になった。気分がいいうちに帰って寝よう。お疲れ様。」
 言いたいことを言って彼は退社時間を打刻してスタッフルームを後にした。







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はいくのひ

 8月19日。
 朝から暑い・・・。
 太陽が低血圧ならなぁ・・・。そんな妄想すら持ちたくなるほどに、朝から元気いっぱいの太陽である。
 坂を上りきったところで、僕は大きく息を吸い込んだ。
 生温い空気が肺を満たす。
 まっすぐ前を向いて歩きだす。
 背筋を伸ばして広角をあげる。
 施設の入り口の前にはいつもの面子がいて、たわいない会話をしている。いつもと同じ朝。世の中は新型の感染症でソーシャルディスタンスだとかマスク着用だとか言っているが、ここにいる人たちの大半はそれとは無関係な世界で生きているかのようである。
「おはようございます。」
 いつもと同じあいさつをして施設内に入った。
 手を洗い更衣をしてスタッフルームに入った。
 時間は8時10分、僕としてはかなり早く出勤したつもりだが、すでに数人のスタッフが室内にいた。
 世間話をしているスタッフから少し離れたところで、不機嫌そうな顔をしてPCの画面を見ている彼の姿が一番最初に目に入ってきた。こんな時間に彼がいるのはすごく珍しい。
 タイムカードをタブレットに読み込ませた後で、僕は彼の隣の椅子に座った。
「おはよう、珍しいねこの時間に来てるって。」
「おはようございます。珍しいね話しかけてくるなんて。」
 彼はじっと僕の目を見て静かに答えた。彼とは仲が悪いわけではないが・・・、僕は彼が苦手だ・・・。
「今日、早朝から受診だっけ。」
「いや、受診はない。僕は一日フリー。」
「そうなんだ・・・。」
 話が続かない。話が途切れるとなんだか気まずい感じなった・・・。
「あ、そうだ、今日は8月19日だよね。何の日か知ってる。」
 話をつなげようと思っての一言。
終戦記念日。」
「え、えっと・・・。」
 彼の返答が本気なのか、冗談なのか、表情からは読み取れない。
「惜しいなぁ、終戦記念日は8月15日だよ。」
「知ってる、終戦記念日を8月15日にしてるのは日本だけだよ。太平洋戦争の敵国アメリカでの対日戦勝記念日は9月2日なんだよ。」
「そうなんだ、それは知らなかったよ。って、僕がきいたのは8月19日なんだけどね。」
 本題がそれそうになったので慌てて戻す。まぁ、慌てて戻さないといけないほどの話でないのだが・・・。
「で、19日は何の日なの。」
「俳句の日だよ、819ではいくと読む語呂合わせ。」
 ちょっと得意そうな顔で言った僕に彼は。
「はいくかぁ、確かにそうとも言えるね。だとしたら、ハイクの日でもいいわけだね。フリーだし、有給消化も含めて2時間ほど歩いてこようかなぁ。」
 こういう返しがあるから、僕は彼が苦手なのだ・・・。
「あ、歯良く、でもいいかぁ。このほうが仕事に直結するし。」
 そう言って彼は右の口角をあげた。
「ということで、今朝の歯磨き支援はいつも以上に念入りにね。」
 歯磨きをしっかりすることに対して反対意見はないが・・・。
「虫歯見つけたら、歯科受診よろしくね。」
 朝からもやもやした気持ちになったし、そうなるだろうという予感が彼に話しかける前にあったのだが・・・。それでも彼に話しかけてしまうのはなぜなのだろう・・・。
 僕は鞄から歯磨き道具を取り出すと立ち上がった。歯磨きで気分転換するために・・・。






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すべてに返事を返すことがいいのか・・・

 朝から暑い・・・。
 去年はこんなに暑かったか・・・?
 そんなことを思いながら駐車場から職場への道を歩く。距離にして300mだが、途中に斜度10%を超える登坂がある。歩いて登るのも正直しんどいが、しんどそうに歩くのは彼のランナーとしての矜持が許さない。しんどさは顔に出さず登りに入ってもさほど速度を落とさず登っていく。
 登っている途中で先ほどの思いが頭によみがえる。
 思えば、去年もこの坂を上りながら同じことを思ったんだっけ・・・。だとすれば、夏は年々暑くなっていることとなる。
「そのうちだれも住めなくなるなぁ。」
 つぶやいて、自分のつぶやきを耳にした彼は口元を緩めた。そのつぶやきは第三者の耳に届くことはなく、セミの鳴き声の波にのみこまれた。
 坂は100mほどで終わり、登りきると10mほど緩やかに下る。下りきった先に職場の事業所がある。彼が坂を下りきったときに前方から人影が近づいてきた。
「おはようございます。」
 ゆっくりと可能な限りいつも通りの抑揚であいさつをする。返答はない、いやあいさつの返答はあるのだ、おはよう、以外の言葉で・・・。
「NHKのアナウンサーのAさんが好きなんですよ。俳優のBさんも好きです・・・。」
 彼を見た時のZ氏ルーティン。それに対して彼は、はい、と返事をして入口へ向かう。入り口の近くには数人が座って話をしている。話の内容は、いつも同じことばかりで嫌になる、某海賊漫画についてのこと、他事業所に若い女性職員がいてうらやましい、などなど・・・。そんな話をしている人のうちの一人が彼の姿を確認すると立ち上がった。
「おはようございます。」
 先ほどと同じ感じであいさつをする。今回もあいさつの返事は、おはよう、ではない。
「腕が痛い、腕が痛い、病院に行けないですか?」
 彼は立ち止まり、その訴えをする人の腕を確認する。外傷はない、腫れてもいないし熱感もない、痛いという腕の動きにも問題はない、どこかでぶつけたのか聞くがはっきりしない。
「状況の確認をするので、朝会後にもう一度話をしましょう。」
 そう伝えて事業所内へ入った。内履きに履き替え手を洗う、新型の感染症が流行し始めてから手洗いは必須になった。ホールへ出て更衣室へ向かう途中、彼は三度目のあいさつをする。
「おはようございます。」
 先ほどと変わらない調子で行う。彼が出勤時に行っているルーティンはこの3回のあいさつだろう。
 近づいてきた人物からの、おはよう、はここでも聞かれない。
「今度ハウステンボスいこうね。」
 これがY氏からの、あいさつ、のようなものだろう・・・。
「はい。」
 彼が行う挨拶と同じ調子で短く返事をして、更衣室へ向かう。その彼の横について歩きながらY氏は、
「今日、○○先生おる?、指の皮剥いでもいい?。」
 など話しかける。その話には返答せず更衣室のドアをゆっくりと開けた。
 更衣を終えて外に出ると、職員がY氏と話をしていた。
「今日、アンパンあるかねぇ~?」
「アンパンは今日はないですよ。」
「○○先生。おる?」
「そのような職員はいないですよ。」
 Y氏の質問の一つ一つに答えている。
 話が進むうちに、徐々にY氏の気分が高揚していく、また返答の内容がY氏の思う内容と違うこともあり声も大きくなる・・・。やがてY氏はややパニック気味に自分の頭をたたき出す・・・。それを見た職員はY氏との距離をとる。しかし、Y氏はその職員に近づき手を取って先ほどの問いかけを繰り返す。職員は困ったように、おらんのじゃけどねぇ・・・、と言う、それを聞いたY氏はさらにパニック気味となる・・・。
 悪循環を断ち切るために彼は間に割って入った。職員をいったんホールから出させる、その後距離を開けて見守った。頭をたたきながら問いかけを続けるY氏に対して、彼は一言も返答せず表情変えずそばで見守った。見守っている間にも別の職員が出勤してくる。新たな出勤者を見つけるたびにY氏はその人に問いかけを行おうとするが、彼はそれらの職員に対して、速やかにこの場を離れるように指示を出した。
 そんな状況を10~15分続けていると、Y氏も落ち着いてきた。それに合わせて彼もホールを出てスタッフルームへと向かった。
 過去、幾度となくこのような対応をしている彼だが、これについていつも思うことがある。それは、この対応は良い対応なのだろうか・・・?というものである。この対応を、良し、と考える根拠は彼の中にもあるが、その反面、抑揚を抑えた返答、短い返答などの機械的な返答でいいのだろうか?
 これといった明確な答えが出ないまま堂々巡りするこの質問に対して、彼は自分も頭をたたきたくなってくるのであった・・・。




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クラスター回避ってすごく難しい・・・

入所施設で高熱の利用者が出たとき、他の方との接触をできるだけ避けて・・・、といわれるし実際にそのような対策をとります。
しかし、これがかなり難しいのですよ・・・。

僕は知的障害者の入所施設勤務なので、自分の働いている環境を例にします。各施設の形態や規模でかなり異なる部分があると思うので、そのあたりはご了承ください。

まず、施設によっては一人部屋でなく、二人(三人の場合もあるかも)部屋という施設もあると思います。
この場合、単身での居室生活は出来ないため同室者には不便をかけることになりますが、その部屋から極力外に出ないでくださいとお願いするしかありません。(施錠し隔離は基本出来ないので・・・)
お願いを守れるか方や倦怠感で活動量が低下している方なら他者との接触は減らせるのですが、障害の程度によっては高熱であっても徘徊する方、じっとその場にとどまって居れない方などもいます。そのような利用者では、実質行動制限なしに他者との接触を減らすのは困難だと思います。
部屋対応する職員ですが、日勤時間帯であればその部屋専属(または熱発者専属)という対応が何とかできます。しかし、夜勤ではそこに専属の夜勤者をあてることはほぼできません・・・。夜勤での対応としては、熱発者の対応はその他の利用者対応が終わってからにする、対応時には保護具をきちんと身に着ける、対応後には手指消毒して退室し必ず手洗いを行う、などといった対応をして職員が感染原因にならないように注意するしかありません。
多くの入所施設では、居室内にトイレがある施設は多くないと思います。多くは共用トイレです。なので、極力居室で過ごしてもらっていても、トイレで他の利用者と接触することが起こりえると思います。

次に、ソーシャルディスタンスですが、これの確保はかなり難しいです。
入所施設を利用している利用者は多かれ少なかれ何らかの援助(介助)を必要とします。これを行うときはどうしても支援者ー利用者間の距離は近くなってしまいます。
職員が媒介者にならないために、職員教育がとても大切になると考えています。
利用者間のソーシャルディスタンスに関しても「距離の見える化」など行っていても、利用者によってはそれを守ることが難しい方も多々います。また、守らせようとすることでトラブルになったり・・・。

最期に、入所施設での感染経路ですが、入所施設で感染が発生する原因の多くは職員が持ち込む、というものだと思っています。しかし、これがすべてではないんですよ・・・。
これはうちの施設のことなのですが、日中は玄関の施錠はしていません(田舎だからということもあるのですが)。
開所日で日中の作業などすることがある時間は少ないですが・・・。
閉所日で日中の活動がない時に利用者が無断で外出する、ということもあります。
少し先に言ったグループホームへ行って、そこの利用者と話したり、近所を徘徊したり・・・。
知的障害が軽度でも発達障害人格障害のような方もいて、そのような人が良く無断で外出してしまいます。
外出先で菌やウィルスに感染して施設内に持ち込む、ということもありうると思います。
こういった利用者に対する対応も感染対策には必要なんだろうなぁ・・・、と感じました。


だれでも思いつきそうな内容をあげましたが、これらに対してどのような対策をたてていくか?が必要だと思っています。
(このほかにも、問題はたくさんあるのですが、それらは勤務している施設の構造であったり、法人内の他事業所との距離であったり、と公開できない部分もあり・・・)





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とある施設でPCR・・・

 8月10日(祝)、今日は山の日だが・・・。流行している新型ウイルスのせいにして外出はせずゴロゴロ・・・。お昼ご飯はカップラーメンにして、食べた後は惰眠をむさぼる至福の時間・・・、を過ごそうと畳に横になった瞬間、左腕につけているスマートウォッチの振動を感じた。
 スマートフォンの音を出すのが好きでないため、常にマナーモードである。そのため、着信に気づかないことも多々あったため購入したのである。
 画面を見ると、そこには職場からの電話であることを伝える通知が・・・。
 休みなのに、めんどいなぁ・・・。利用者の体調に何かあったのか?それとも誤薬でもしたか・・・?内服薬の準備忘れや書類にミスなど、自分の落ち度に関しては全く考えないところが、彼の自信家(といっても何の根拠もない自信だが・・・)な面を表している。
 めんどくさそうな表情でスマフォを手に取り着信に応じる。表情とは裏腹に対応の声は丁寧・・・。そのギャップを自分で想像して少し口元が緩んだ。スマフォから流れてくる声は祝日の日直をしている女性職員。ということは女性利用者に何かあったか・・・、と思い心当たりの利用者の名前が頭をよぎった瞬間、その考えは覆された。
 その女性が伝えた名前はA氏であり、A氏は男性利用者だったからだ。何となく出鼻をくじかれた感じになったが、そこからすぐに視点を切り替えて状況を聞く。10日の朝から発熱、現在38.7℃なのでどうしましょうか・・・?というものだった。
 どうしましょうか・・・?といわれてもなぁ。
 そんな思いが頭をよぎる。僕は一看護師だし休日外来の病院への受診を指示しようかなぁ・・・。と思ったりもしたが、状況把握もせず指示出すのも気が引けたので、利用者の状況を聞く。  休日に職場から電話かけてきて相談に乗らないといけないなら、待機手当出してほしい、そうでないと電話出たくない、などを上司に訴えたが上司からは、看護師手当を出してるのだから待機手当は出せない、電話に必ず出る必要はないができれば出てほしい、というような変なお願いをされている。それに対して休日に電話出てやるもんか、と思っていてもいざかかってくると気になって出てしまう・・・。このあたりの人の好さ、というより人に嫌われたくはないという根本の思い、がいつも彼を苦しめている。そう彼は考えているのだが・・・。  状況としては、呼吸器症状で目立ったものはなし、酸素飽和度は97%、血圧は136/89だが脈拍は116と速い、下痢はなし、排尿は出ている、排尿痛、腹痛や咽頭通などはA氏の返答がはっきりしないため分からない・・・、体熱感はもちろんあるが多量の発汗はなし、結膜の充血や涙目のような感じはあるが顔色の不良はない、鼻水や鼻づまりはない、黄疸もない、などなど・・・。食事は朝、昼と全食、食後の嘔吐や気分不良もない。水分も飲めているし職員が持参した水分量も少ないことはない。
 ほかの利用者との接触は極力避ける。高熱ではあるが、その他の症状はなく、食事水分も摂れている、何よりA氏はこれまでも原因不明の高熱を何度か出している(精査を行ったりもしたが原因は不明)ためクーリングと水分補給で経過を見ていく、経口摂取が出来なくなったら休日診療を受診する、受診前には発熱があることなど伝えてから受診する、などの指示を出して電話を切った。
 話しているうちに眠気はどこかへ姿を消していた。せっかくの至福の時間が・・・。
 そう思ったが、無くなったものは仕方ない、彼は台所に向かい食器棚からコーヒーミルを取り出した。
 コーヒーでも淹れるか・・・。
 そう呟いて新しいコーヒー豆の袋を開いたとき、彼は今日二度目の出鼻をくじかれる状況に直面した。
 開けた袋から見えたのは豆ではなく、すでに粗挽きされたコーヒーだったからである・・・。



これが(脚色はありますが)僕が働く法人で起こった新型コロナウィルス感染(疑い)のプロローグです(笑)

翌日になっても解熱せず熱も37.0℃以下に下がらず、受診し検査してもこれといった以上がなかったので、紹介状によりPCR検査を受けることとなりました。
検査の結果は陰性で、ホット胸をなでおろしたのですが、以前発熱の原因は不明です・・・。(採血でも腎・肝機能に異常はなかったですし・・・)
また、今回の新コロ騒動を通じて、感染症対策の不十分さがたくさん見つかったので、これを見直していかないといけません。もちろん一人では無理なので、職場の全員で協力して見直すのですが、その提案をするのが個人的には一番頭が痛かったりします・・・。(何しろ、嫌われたくないと思いながら、素直になれない彼なので・・・)

そのあたりのまとめを次回書けたらいいなぁ、と思っています。



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